催眠療法 エーディーラボ

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体験談 おすそ分け貯金をありがとう 〜泣き虫Mのリフレッシュ休暇の全貌〜

九月の暑い火曜日。36にもなった女が初めて一人旅をした。
別に楽しい旅行ではない。自分におきている悩みを改善するための切羽詰った旅行だった。
前日は先生のお宅までのルート確認(電車の時刻や乗り継ぎ)や、どんな事になるんだろうという不安や期待でよく眠れなかった。


1 催眠療法てナンダ!

出発した特急電車の中、これで私に起こってることは良くなるんだよね?催眠療法ってインチキじゃないよねって自問自答しているうちに大阪についた。 それからは前日復習したルートをたどることで頭が一杯。

バスが先生のお宅に近づくにつれ怖い・逃げて帰りたいと心臓がバクバク、胸は余計に酸素を吸うので手には一杯の汗だった。 かすかに残っている勇気を振り絞り部屋のチャイムを押す。

携帯で時間を確認すると20分ほど予約時間より早かった。
しばらくしてからドアホーン越しに先生の声。低い落ち着いた声でまずホッとする。ドアが開く。
中から神社の狛犬を優しくしたような顔が出迎えてくれた。 「Mさん。いらっしゃい。前にお一人、急に来られたのでまだ準備をしてないんだけど…。」

玄関には履きなれた靴が2〜3足ありごく普通の家庭の匂いがした。(当時は自宅の一室がオフィスでした)
ここに住んでんだなと思いつつ中に入る。玄関脇の洗面所を通り過ぎ白いドアを開けると目の前にパソコン一式セット様がけして広いとはいえない部屋にドーンと鎮座していた。

先生は「今日から助手が夏休みでね。頂いた依頼メールを探すにも少し時間がかかって」と言いつつパソコンに斜めに対面するソファーに腰をかけるよう勧められた。
先生はパチパチと慣れた手つきでメールを呼び出しているが「あ。こりゃ返信したほうやった。」と慌てている。そのしぐさを見ていて野師だったら儲かってるはずだがこりゃ本物かもしれないなとなんか落ち着いた。
やっとメールが出てきて「あっ。注射が苦手になった看護婦さんね。」と先生一人で納得。


まず潜在意識についてのレクチャーを受ける。
「例えば指先を切ったとします。痛いと感じるのは指で判断してるわけではないのはご存知ですね。指を切ったという情報が神経を伝って脳にいく。脳は神経からの電話で『そうか。指切ったんか。そりゃ痛そうやな。血出てるんか。大変やんか!』と痛みの指令を出すけど、たまに誤報もある。
悪い魔法にかけられたように、なんでもないことや習慣化したことが突然苦手になったり出来なくなる。

肉体的に原因が無い場合には何でそうなったかは本人にもわからないので困ってしまうけど一人だけ原因を知っているのが潜在意識です」話を聞いて悪い魔法というのと脳への直通電話の喩えが気に入った。
知っている看護婦さんなら大声で「上手い、座布団一枚!」と叫んだだろう。
そして潜在意識に原因を聞くためには理性が邪魔しない催眠状態で直接働きかけるのがいいのだと話してくれる。

次は催眠療法の「はーい。あなたは眠くなる」などの誤解を振り払うレクチャーや催眠療法の実際の誘導方法を教えてくれた。 そしてプレ催眠。何も持っていないのに先生の声のイメージどおりに分厚い本を片手に持ってとても重くなり手が下がってしまうなどの催眠の体験をして催眠療法が始まった。



2 催眠療法での原因の追求へ突入
初めに先生から「よく、私は催眠状態じゃなかった、先生の声をずぅーと聞いていたと言われる方がいますが安心してください。 立派に催眠状態に入っています。
反対に何をしたのか眠っていて覚えてないと言う方もいます。
人によって催眠状態の感じ方が違うのです。
今まで多くの人にしてきたが、催眠状態に入れなかったのは人をまったく信じられない程のトラウマを持った人とうちの家族が笑ってしまって出来なかったくらいです」と言ってくれる。

次は催眠状態に慣れるための催眠を受ける。
催眠療法はソファにゆったりと持たれて目を閉じてリラックスすることから始まる。リラックスするのは理性を振り払うためにも、とっても大切なことだと教わる。

BGMはアルファ波の音楽(先生に毎朝聞いて自己催眠に入るために必要と貰ったので聞きたい人は私まで)。
先生の声が低く優しく耳元で呟く。「(企業秘密のため一部省略)さあ、だんだん力が抜けてまぶたが重くなってきますよ。とてもいい気持ちです」と休むことなく話しかけている。

私は(これってきもちいいのかな?)と理性が呟く。
でもそれは突然だった。閉じている目からハラハラと涙が頬を伝っていき止まらない。
何で私、泣いてるの?と戸惑っていると囁きを続けながら先生が涙を拭いてくれる。
これって生まれて初めて恋人でもない男性に涙をぬぐってもらう体験だ。
あまりの恥ずかしさについ微笑んでしまった。この涙がなかなか止まらないのだ。

先生が「はい。水の音がすると、とてもいい気分で目が覚めますよ」と語りかけて、水の音と共になんか目を開いていた私。でもいい気分がわからない。これって催眠状態だったの?と思っていると見越したように「浅い催眠状態に入ってたみたいですね。このまま深い催眠に入っても良かったのだが・・。でも、初めて泣きながら微笑んでる人を見ました。暴れる人やワアワア泣く人はいましたが。」と言われて赤面する私。

では次に注射が出来なくなった原因を探ろうと退行催眠。
やはりリラックスしてから(またここでも泣いてます。私)、「さぁ。目の前に10段くらいの階段が見えてきました。私と一緒に降りましょう。気持ちの準備が出来たらうなづいて合図してください」と先生は黙って待っている。

困った。階段のイメージがなかなか湧かない。
うーんとイメージが湧いてくるのを待っているとほの暗い木造の古い校舎にあるような階段が一瞬出てきた。
怖ぇー。嫌だ。こんなん降りたくない!そこへ先生の声。「私も一緒に降ります。」まぁ先生も一緒だったら降りるイメージが出てくるかも・・。

恐る恐る降りるイメージを作る私。
でもこの階段は四段くらいのが降りても降りてもまた一段目みたいな感じがする。先生の声に導かれ最後の一段を降りる。「ほらあなたが一番今困っていることの原因の場面が見えてきましたよ。」との言葉。外来処置室の映像が一瞬だけ浮かぶ。するともう一人の私の声がクールに゙あんた。それが原因ではないでしょ゛とそのイメージを払いのける。すると出てきたんですねー。先生も「思いもしないものが原因でビックリされる方もいます。」の言葉どおりでした。

それはCT室でのダイレクトCTで造影剤を注射しようとして検査技師さんに「これって漏れたら検査になんないから失敗しないでね」といわれている場面。
実際にも造影開始して、しばらくしたら漏れてしまいました。
あ・これだったの?って、感じ。ああそうか。これで針が入った後にもれても無いのに手が震えて怖くなったりしたんだ。ついその検査技師さんを憎んでしまった。でも説明で聞いたほど鮮明な映像のようなものでなく、なんか映画でよくあるフラッシュバックのような一瞬の映像だった。これが本当の原因なのかと半信半疑の私。


3 私の輝いていた時っていつ?
原因がわかったので(本当にソレ?)以前の自信を持って仕事をしていた頃の自分を思い出すための退行催眠をする。

手順は一緒。
また階段を下りると「はい。自信を持って輝いているあなたが見えてきますよ。何が見えますか?」

すると三つの顔が一人ずつ見えた。
厳しい水分制限しているのに「うがいしたい」といって、私が介助している吸い飲みからゴクン・ゴクンと美味しそうに水を飲んでしまったKさんの笑顔。 点滴ボトルの裏側によく絵を書かせてもらったスキルス癌のFさんの顔。でも外出させてあげられず亡くなったっけ。
次は元漁師のMさん。誕生祝に大量船にのっているMさんや奥さんを書いたっけ。でも奥さんとの仲は修復中で片足切断しているのに膝下までの両足が見える絵を書いた。後で、あれで良かったのかなぁーと失敗したことばかりだった。

催眠の最後はやはり『目が覚めた後はとてもいい気分です。』で終わるけどいい気分がわからない。
催眠後に先生に見えたことが失敗したことばかりだと言うとまたビックリされた。
「普通の会社員とかの女性では良い頃が出てくるのだけど。仕事熱心な男の人には反省すべき場面が出てきたというのはありますが・・。仕事へのプライドが高いですね。」やっぱり私ってこんなことも男性的だったのね。



4 真夜中にいい気分
一日目が終わって車でホテルに送ってもらう。
途中、ホテルの食事は高いからとバイキングスタイルのファミレスで明石大橋を眺めながらゴチになる。

ホテルの部屋でポケーとしてから今日の体験を振り返る。
本当にCT室の一件が原因だったのか・催眠状態に入れてたのか?あんだけ泣いたんだからそうなのかも。私の輝いていた時ってないのかな?外科病棟の時が一番輝いてたんじゃないのかな?あの頃は他のスタッフに追いつけない看護技量をかばうかのように患者さんを和ませる(原文のまま)ことに全力を出していた気がする。

よく同僚からも「Mが来ると楽しいって患者さんが言ってたわよ(原文のまま)」と誉められてたっけ。
内科病棟ではある女性の患者さんに俳句を貰ったなー。(原文のまま)「病床に 交わすユーモア 夏涼し」だったかメモに書いて渡してくれた。余白にMさんのことです。くよくよしないあなたが好きですと書いてくれたメモは部屋に張ってあるけどしばらく眺めてなかった。

よく考えると沢山の患者さんに関わって(原文のまま)一杯教えてもらった。
自分ひとりで一人前の看護婦になったつもりでいたけど患者さんのありがとうという言葉(原文のまま)や笑顔が育ててくれたんだ。患者さんの「ありがとう」には(原文のまま)きっといろんな意味が込められてたのだろうな。
やっと気づいてくれたのかのありがとうや、まぁ下手だけど一生懸命してくれたからのありがとうや、もっと頑張りやのありがとう、別にして欲しくないのにしてくれてありがとう等があったと思う。つらい病床の身でも私に感謝を言ってくれた患者さん達。(原文のまま)ベテランになったのに注射が出来なくなるなんて不幸な私、と思っていたけど少しずつ看護する力のおすそ分けして貰って育ったのだと気づいた。 きっと患者さんのくれる力は(原文のまま)一人一人小さいけど積み立て貯金にして次の患者さんに使いなよって(原文のまま)もらった気がする。

初めの頃はこんな私に感謝の言葉をかけてくれると恐縮したけど、経験を積むにつれ「ありがとう」と言われるだけの技量があるのだとモテモテねぇちゃんのように高飛車になって、誰に貰ったかも忘れて私が使ってあたりまえと貯金は減らすし貯めれなくなったのかもしれない。とってもクサイことを書いていると自分でも思うけど。

なんて私って幸せ者だったのだと真夜中のホテルの一室で雄叫びを挙げたいほどのいい気分に浸った。
こんなすごい事、気づいている人は知ってるだろうが同じようにベテランといわれる年代になり勘違いしている人には伝えなきゃと思った。これが私に起こった注射恐怖・不安という自分自身には肉体的に害の無い試練(先生の弁)の答えかもと。
手術室勤務でも使い果たした貯金が貯まるよう頑張ろうと満開笑顔で泣きながら考えた結論でした。(だけど新興宗教とかに、はまるつもりはありません。神様はいるかも知んないけど、とっても意地悪だから嫌いです。)


5 催眠療法終了
昨日の夜の興奮が冷めぬまま先生のお宅へ。
食事を緊張のあまり、まる一日間少ししか食べれていないせいかリラックスした瞬間から腹の虫が泣き出して集中できず。
深い催眠下での潜在意識への働きかけが出来ずに目が開く。一生懸命している先生にとても申し訳ない状態になった。

「ここで深い催眠に入れなくても自宅でやってみたら意外に出来たという方もいたので自己催眠マスターコースの資料を差し上げましょう。」と資料をもらう。
日記も三日も書けない私だけにやや心配。

でも先生、トライしてみます。
結局カウンセリングのように先生に話を聞いてもらい帰宅の路につく。
帰りの電車から見える景色がとてもきれいだ。こんなにきれいに見えたのは中学時代にいじめで死んでやると思い、家にある中で1番きれいな(でもぜんぜん切れなかった)包丁で手首を切ろうとした朝に見た景色と匹敵する。

本当にリフレッシュできたなと思う。
化粧が全部はげて鼻を赤くしている泣き虫に取り付かれた私でした。最後に先生はいい魔法をかけてくれた。
もっと自信を持ってもいいことと自分を許すこと。


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